令和7年度施政方針
令和7年度施政方針全文 (PDFファイル: 364.8KB)
はじめに
本日から、来年度各会計予算案を御審議いただくに当たり、私の来年度の施政方針を明らかにし、議会を始め市民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。
平成17年に旧三条市、旧栄町、旧下田村が合併して新三条市となり、人口約10万8,000人の都市として新たなスタートを切った私たちは、今年の5月1日に合併20周年を迎えます。新市合併に向けて礎を築いてくださった方々、誕生した新三条市を常に高みへと導いてくださった諸先輩方、そして、この地域の発展に日頃から御尽力をいただいている皆様に深く感謝申し上げます。合併20周年を迎えるに当たり、市民の皆様と共に先人たちが積み上げてきた功績を称え、私たち三条市の更なる飛躍に向けて、新たな歴史を刻む機会となる記念式典を始めとした節目を祝う事業を実施し、私たち三条市の魅力を市内外に発信してまいります。
さて、私たち三条市は合併20周年を目前とし、大きな変化に直面しております。人口減少が急激に進み、必要な職員や税収の確保が一層厳しくなる中で、これまで当たり前に実施してきた市の事業をこれまでどおり維持し続けることが困難になりつつあります。加速度的に進む人口減少において、市が今しなければならないことを見定め、早急に取組を進めなければ、私たち三条市の明るい未来を描くことができません。
一方で、節目となるこの時機に、このような課題に目を向けることができることを、私は好機であると捉えております。なぜならば、従前からの思い込みにとらわれず、私たち三条市にとって本当に必要なものは何なのかを改めて見つめ直し、画期的な変革を行うチャンスであるからです。
人的資源や財源に制約がある中で、基礎自治体である三条市が取り組めることには限界があります。しかし、限られた資源を最大限に活用し、総合計画に掲げる各施策のそれぞれにおいて、焦点を当てるべきものを見定め、着実に推進していくことが、柔軟で持続可能な地域社会の実現にとって非常に重要であると私は考えています。
このような中で、私たち三条市を更に選びたくなるまちにしていくため、令和7年度に実施する具体的な取組について説明を申し上げます。
子どもが健やかに育つ環境づくり
私たち三条市の未来を担っていく、このまちの宝である子どもの健やかな成長を支えていくため、その基盤となる教育環境の整備を進めてきました。引き続き、児童・生徒と教職員の双方の環境を向上させ、子ども一人一人が持つ無限の可能性を伸ばしていけるよう、時代に適応した学校の在り方の検討、きめ細かな児童・生徒への支援などを重点的に進めてまいります。
子どもが集団の中で多様な考えに触れ、一人一人がその資質や能力を伸ばしていくためには、一定の集団規模が確保されていることが望ましいとされています。少子化における適切な学校規模の検討については、今年度設置した未来の学校検討委員会による提言を踏まえ、個々の学園区域における方針に基づき今後の小学校等の在り方について検討を進めてまいります。特に、「しただの郷学園」区域については、未来の学校検討委員会から示された方針を踏まえ、懇談会等を通じて地域の皆様の声をお聞きし、統廃合について慎重に判断してまいります。
地球沸騰の時代と言われ、命に危険が及ぶほどの猛暑日が多くなっている中、部活動等の運動を行う生徒を熱中症から守るため、中学校及び小中一体校の体育館への空調設備の導入を進めてまいります。
また、登下校時の熱中症の危険や、不審者による犯罪被害から児童・生徒を守るため、スクールバスの運行範囲の見直しを行ってまいります。
くわえて、教職員の事務負担を軽減して児童・生徒に向き合う時間の一層の確保を図り、より迅速かつきめ細かな児童・生徒への学習指導や生徒指導につなげるため、新潟県が共同調達する統合型校務支援システムを導入し、教職員が職員室に拘束されることなく業務を行うことができる環境を整備してまいります。
さらに、誰もが楽しく学びの多い学校生活を送ることができるよう、学校、教室へ行くことが困難な状況にある児童・生徒への支援をより充実させるため、新たに栄地域、下田地域において教育支援センター「ふれあいルーム」の分室を開設することに加え、小学校及び義務教育学校前期課程に校内教育支援センター支援員を配置してまいります。
子どもを育て、輝かしい未来につないでいくまでの道のりにおいて、子育てに励む保護者は、子どもの笑顔に癒され、元気をもらい、そしてたくましく成長する姿を見守ることで大きな幸せを感じます。しかし、それぞれ異なる事情により、積極的に子育てを楽しめない日々が続く家庭も存在しています。保護者の置かれた状況にかかわらず、誰もが安心して子育てを楽しむことができるよう、子育てに対する不安の解消に向けた支援などを重点的に進めてまいります。
産後の心身の不調や不安を抱えているものの、様々な理由により医療機関等において短期入所や通所による産後ケアを受けることができない母子への支援を拡充するため、新たに訪問型の産後ケア事業を実施してまいります。
また、出産後間もない時期のストレスや強い不安感、援助者が不在であること等を要因として家事・育児に取り組むことが困難である状況は、産後うつや児童虐待につながってしまうリスクを伴っています。子どもの健やかな成長を守るため、支援が必要な家庭を訪問し、不安や悩みを傾聴するとともに家事等の援助を行う家事・育児支援事業を実施してまいります。
持続可能で個性的な地域産業の振興

この地域が誇る多様なものづくりの技術や価値を後世に伝えていくためにも、担い手の確保は待ったなしです。今春、いよいよ三条市立大学の一期生が卒業します。三条市立大学には、県内外から数多くの求人があり、産学連携実習を始めとする特色あるカリキュラムで学んだ学生が社会から評価を得ていることを実感いたしました。一方で、人材を求める側の企業に目を向けると、地方と首都圏等では人材採用におけるスピード感、ノウハウやかけるリソース等に差があることにより、このままでは人材採用において首都圏等の企業に遅れをとってしまうという課題が浮き彫りになりました。
来年度は、労働生産性の維持に必要な人材の確保や育成、働きやすい職場環境の整備等、更なる地域産業の発展に寄与する施策を重点的に進めてまいります。
経済分野に限ったことではありませんが、様々な活動の基は人です。
限られた人材を大切にし、その能力を伸ばし、最大限に生かすことができる環境が整っていてこそ、人が集まり、その集合体である企業が発展し、地域の産業が面として成長していきます。
一方、労働環境の改善を始め、人を大切にしていく経営が重要との認識がこの地域にも少しずつ浸透してきてはいますが、個々の企業がそれを実践していくことは容易ではありません。
これまで働きやすい環境の整備や働く方の負担を軽減するデジタル化の支援などに取り組んでまいりましたが、来年度はそれらに加え、子どもや若者が地域への理解を深め、その魅力を発見しながら自らのキャリアを考える取組や人にまつわる取組の協同化など、人に関する課題の解決に向け、地域の様々な関係者が力を合わせて取り組むプラットフォームの誕生を目指してまいります。
また、多様な人材が市内企業を選びたくなるためには、設備等の面からも労働環境の充実に取り組んでいく必要があります。異常な夏の暑さが常態化する中で、工場等の遮熱、断熱は、働きやすい環境を整え、就職先としての魅力を高めるだけではなく、従業員の健康管理や環境負荷の低減、省エネルギーによる経営コストの恒常的な削減にも資するものです。そうした様々な効果が期待できる取組を促していくため、工場等遮熱断熱促進事業を実施してまいります。
農業分野においては、昨年から米の価格が上昇する一方で、肥料等を始めとした生産費が上昇し続けているため、必ずしも収益の改善につながっておりません。また、野菜や果物においても、近年の著しい気候変動による生育不良等により、安定した農業収入を得ることの難しさが課題となっています。
このような厳しい環境下においても、私たち三条市の農業が重要な基幹産業として持続できるよう、必要な措置を継続してまいります。
気候や、ほ場の条件から経営が難しい中山間地域農業に携わる方々に対しては、これまで支援してきた下田産コシヒカリの付加価値向上や国内外の販路拡大活動の成果を踏まえ、関係者が主体となって自走できる体制づくりに向けて支援してまいります。
三条産果物についても、魅力を引き出していただく事業者等との連携を深め、更なるプロモーション活動の充実を図るとともに、米国及びアジア市場への販路開拓活動を支援してまいります。
また、将来にわたる適正な農地利用の方向性を示すために、この3月末に策定する地域計画を基に、個々では解決が困難な課題について、地域の農業情勢に精通した農業委員や農地利用最適化推進委員を始め、農業協同組合や土地改良区などの関係団体と協力・連携しながら、地域での話合い等をサポートしてまいります。
これら市内で産み出された商工業製品や農産物が、全国的に評価されてきたことを表す指標の一つがふるさと納税です。確かな技術に裏打ちされた製品や風味豊かな農産物のPRをより一層積極的に行っていくとともに、事業者との連携の下、返礼品の充実等により、更なるふるさと三条応援寄附金の増加を目指してまいります。
健康で心豊かに暮らせる環境づくり
令和7年は、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる年です。今後更に加速する少子高齢化と生産年齢人口減少等による諸問題は、いわゆる2040年問題と言われ、社会保障制度の維持が困難になるおそれがあります。社会保障制度の持続可能性を高めていくため、まずは医療、介護サービスの基盤となる人材不足への対応に取り組むことが必要です。あわせて、急激な社会変容とともに顕在化してきた複雑で複合的な支援ニーズに対し、従来の高齢者、障がいのある方といった対象者ごとの制度の枠組みを越えた包括的な支援体制の構築が必要です。そのため、限られた医療・介護資源を有効に活用し、必要なサービスを確保しつつ、地域包括ケアシステムを深化させていくための分野横断的な体制強化を重点的に進めてまいります。
昨年開院した済生会新潟県央基幹病院が急性期医療を担い、中核病院として他病院等と連携しながら「地域がひとつの病院」のように機能する体制となり、県央地域の医療再編が完了しました。開院後、済生会新潟県央基幹病院の救急患者は当初の想定を大きく上回るなど、医療従事者に負荷がかかる状況となっています。一人一人が必要な医療を受けられるように、適正受診に関する啓発を新潟県や県央5市町村で住民の皆様に引き続き呼び掛けていくほか、医療再編の考え方について改めて周知してまいります。また、地域医療を支える医師・看護師の確保については、新潟県と連携した医学部地域枠の学生に対する修学資金の貸与や、これまで35人の就業・移住に結び付いた看護師等就業・移住支援金の支給などを継続して実施してまいります。
介護人材の確保については、三条市介護人材確保対策検討会での議論を踏まえ、まずは、職員の人材定着に向けた具体的な取組を進めてまいります。そのため、働きがいのある職場環境づくりとして、モデルとなる法人を選定し、職場環境改善や人材育成のプログラムを実施するとともに、業務効率化に向けICT・IoT活用に関する情報交換会等を実施します。また、働きたくなる地域づくりとして、事業所間で連携した職員交流会等を行うことで、事業所を越えた顔の見える関係づくりを図ってまいります。
複雑な困りごとを抱える世帯への支援として、介護や福祉といった支援する関係機関同士の連携を促進し、世帯ごとに必要な支援方針の整理や関係機関の役割分担などを担う調整役として、新たに重層コーディネーターを配置し、世帯ごとの課題に応じた包括的な支援体制を構築してまいります。
全ての人の尊厳を守るまちづくり

少子高齢化が進行し認知症や障がいのある方が増加する中、昨年閣議決定された認知症施策推進基本計画では新しい認知症観が打ち出されました。また、同じく昨年に施行された改正障害者差別解消法においても事業者による合理的配慮の提供が義務化されました。地域共生社会の実現に向け、年齢や障がいの有無に関係なく、誰もが住み慣れた地域で希望を持って自分らしく暮らせるよう、互いを尊重し支え合う意識の醸成に努めてまいります。
また、身寄りがない方など家族から支援を受けられない環境下にある方であっても尊厳を持ち自分らしく生きられるよう、その支援に当たる専門職に対する相談支援を充実させるとともに、関係機関と連携し支援体制を整備してまいります。
障がいを理由とする差別の解消を推進し、共生社会を実現するため、「三条市障がいのある人もない人も共に自分らしく暮らすためのまちづくり条例」を制定してから2年が経過しようとしています。相互理解のきっかけとして開催している“ツナガル”フォーラムは、回を重ねるごとに参加者が増え、昨年には1,200人もの方が参加され、誰もが共に同じ時を楽しみ交流できる場となっています。
一方で、共生社会推進企業としてツナガルカンパニー認証制度を設けているものの、未だこの取組に御賛同いただける事業者の数が十分であるとは言えません。事業者への働き掛けを一層強化するとともに、一人一人ができることを理解し、共生社会の実現に向けた行動を起こすことができるよう歩みを止めることなく着実に取組を進めてまいります。
認知症や障がいなどにより判断能力が十分でない方であっても本人の意思を尊重した生活を維持するため、本人に代わり必要な手続などを行う成年後見制度について、高齢者のみ世帯や単身世帯の増加などにより制度の利用が必要な方が増加すると見込まれることから、本人や支援する関係機関等に対し、制度の周知啓発や相談などを行うため、「三条市成年後見支援センター」を設置し、尊厳を保持し自分らしく暮らし続けるための支援体制を強化してまいります。
身寄りのない方の増加に伴い、支援が困難な方が増えているため、支援に関わる関係者が抱える不安感や迷いの軽減を図るとともに、本人の尊厳を尊重した支援がなされるよう、今年度策定する「身寄りがない人への支援に関するガイドライン」を運用しつつ、現場の専門職と検証を重ねながら段階的に内容の充実を図ってまいります。
住み良い地域づくり

住み良い地域であることを実感できるのは、まちに活気があり、治安や景観が保たれ、暮らしに必要な公的サービスを適切に受けることができ、道路や交通網等が整備されるなど、日常を取り巻く生活環境が満たされていることにほかなりません。
まちに活気をもたらすためには、移住者などの定住人口、観光客などの交流人口の拡大のみならず、祭りやイベントに参加してくれる方、ふるさと三条応援寄附金として寄附してくれる方など、私たち三条市と多様に関わりを持ってくれる関係人口の拡大も重要です。そのために、私たち三条市に興味を持つ方がこの地域や三条市民と、多様な形で交流し、継続的な関わりを持ち続けていく中で、地域の担い手としての活動や、将来の三条市への移住・定住に結び付けられるよう先端技術を活用した交流機会を創出してまいります。
具体的には、現実と仮想空間の双方においてこの地域に関わり続ける証として、デジタル資産となる保有データに「唯一性」と「所有の証明」を付与できるブロックチェーンの技術を用いた「デジタル三条市民証」を、市外の方をメインターゲットとして発行します。また、地理的・時間的な制約を受けない仮想の空間、いわゆるメタバース空間にバーチャル三条市を構築することで、これまでにない新たなコミュニティや多様な交流の場を創出してまいります。
そのためにまずは、あらゆる視点から関係人口として関わりを持っていただくデジタル三条市民を募り、物理的な距離に縛られずに三条市民と交流を進める中で、一過性にとどまらない関係性を深めていけるような取組を進め、私たち三条市を第二のふるさととして認識していただけるよう機運を醸成してまいります。
空き家の増加が社会問題となる中、まちの景観維持や防犯・防災の面からも、市が地域住民と協力して進めていく空き家対策の取組はますます重要となります。
今後、空き家対策の相談窓口を一元化するとともに、民間事業者との連携を強化した中で、増加する空き家が周囲に悪影響を及ぼす前に有効活用や除却が効果的に行われるよう取組を更に強化してまいります。
人口減少や少子高齢化、施設の老朽化など、様々な要因による公的基盤の維持に対する懸念も拭えません。これからは、地域の動態変化に見合った見直しや工夫をしていく必要があります。そのため、行政需要の減退により十分に活用されていない施設や、老朽化した施設は、その維持存続にコストがかかる上、将来世代に管理負担を生じさせることになるため、速やかに対処していく必要があります。各施設の利用状況や運営経費、老朽化度を踏まえ、適正な公共施設の配置について必要な取組を推進してまいります。
災害に強いまちづくり
近年、異常気象が頻発化し、日本各地で記録的な大雨による水害や土砂災害が発生しています。また、令和6年能登半島地震は市内にも被害をもたらし、私たちは改めて各種災害への備えの重要性を思い知らされています。引き続き、一人一人が自分の命を自分で守ることができるよう、ソフト面、ハード面双方の対策を重点的に進めてまいります。
発災時やそのおそれがある時は、正確な情報に基づきいち早く避難することが求められますが、避難所に行くことのみが避難ではありません。市民の皆様それぞれがより安全に避難を完了するためには、水害時における垂直避難など、必ずしも避難所ありきではなく、それぞれの状況に応じた避難方法を想定しておくことが重要です。各個人が個別最適な避難を考えるとともに、適切な防災知識を身に付けることができるよう、引き続き各主体と協働して防災訓練を実施してまいります。
また、事前予測が困難である地震に対しては、発災後にいち早く災害対策本部を立ち上げ、人命救助や避難所開設などの対応につなげていく必要があることから、迅速な体制構築に向けた訓練を継続し、震災への対応力を向上させてまいります。
大きな災害が発生した場合、市民の皆様の命を守るためには三条市単独での対応能力には限界があり、新潟県を始めとする他の自治体との相互の協力・連携が不可欠となります。ICTを活用し、避難所運営や避難所外の避難者の情報を迅速に共有し、支援につなげていくため、新潟県が構築する県内共同の避難者支援システムの導入を進めてまいります。
ハード面においては、局地的な大雨などにより道路冠水が起こりやすい西本成寺、直江町地内の排水路整備事業や、嵐北地区で実施している3か所の雨水調整池整備事業などについて、早期に事業効果が発揮できるよう着実に進めてまいります。
令和7年度予算案の概要
令和7年度の当初予算編成に当たっては、長期化する物価高騰や、約30年ぶりとなる高水準となった令和6年の人事院勧告に伴う人件費の増加などにより厳しさを増す財政状況の中、総合計画に掲げた子どもが健やかに育つ環境づくりや持続可能で個性的な地域産業の振興などに重点的に予算を配分するため、これまで確保した財源等を活用するとともに、事業の見直し等を行いながら編成を行いました。
この方針に基づき、一般会計予算案は、総額を519億8,300万円、対前年度比では19億1,200万円、3.8パーセントの増としました。
主要な財政指標につきましては、今年度決算見込みと比較して、経常収支比率は、2.0ポイント高い101.7パーセント、実質公債費比率は、0.3ポイント低い14.0パーセント、財政調整基金残高は、物価高騰や人件費の増加などの影響により、約10億円減少し、約81億円となるものと見込んでいます。
国の令和7年度地方財政計画において、更なる物価高騰や給与改定が見込まれるなど、今後も財政状況の悪化が懸念されることから、今後の人口減少や税制改正等も見据え、行財政改革に取り組みながら、健全財政を維持してまいります。
国民健康保険事業特別会計予算案は、総額を80億650万円としました。令和7年度の国保税率については、物価高騰を考慮し、被保険者の負担増を抑えるため、国民健康保険事業財政調整基金を活用して据置きとします。引き続き、特定健康診査の受診を促進するとともに、生活習慣病の発症予防、重症化予防に重点的に取り組み、被保険者の健康の維持増進に努めてまいります。
後期高齢者医療特別会計予算案は、総額を14億9,830万円としました。本制度の適正かつ効率的な運営を図るため、広域連合と連携して高齢者の保健事業と介護予防事業を一体的に実施してまいります。
介護保険事業特別会計予算案は、総額を108億100万円としました。引き続き、介護予防や自立支援に取り組み、給付の適正化に努めるとともに、今後も増加が見込まれる後期高齢者人口や要介護認定者数、介護サービス需要量の増加に対応するため、介護人材の確保に向けた取組を進め、持続可能な介護保険サービスの提供体制を整備してまいります。
水道事業会計予算案は、収益的支出を20億7,746万円、資本的支出を17億2,364万1千円としました。事業収益が減少する中、経営の効率化に努めながら、配水管の布設替えによる水道管路の耐震化を着実に進めるなど、良質な水道水の安定供給に取り組んでまいります。また、将来にわたり安定的に事業を継続していくための中長期的な経営戦略である「水道事業ビジョン」を策定してまいります。
下水道事業会計予算案は、収益的支出を25億791万6千円、資本的支出を31億8,649万6千円としました。汚水については、接続率の向上を図るとともに、農業集落排水施設の統廃合に向けた接続工事を進めるほか、施設の適切な維持管理に努めてまいります。雨水については、引き続き雨水調整池等の整備を着実に進め浸水対策に取り組んでまいります。
次に、これまで申し上げてきたもののほか、来年度の主な事業について説明を申し上げます。
総務・文教関連施策

まず、総務・文教関連施策です。
令和6年能登半島地震では、上下水道施設が被災し避難所のトイレが使用できなくなった際、簡易トイレ等の備蓄が不十分だったことにより一時的に避難所の衛生環境に課題が残ったとする検証結果が出ています。近年多発する災害に備え、避難所環境を理由に安全な避難が損なわれることのないよう、停電や断水等が長期化し、トイレが使用できなくなる場合を想定した備蓄の強化を図ってまいります。
休日の部活動については、教員の負担軽減を図りながらも生徒がスポーツ・文化芸術に親しむ機会を確保するため、引き続き地域クラブ活動推進委員会において広く意見を求めるとともに、関係者の皆様からの御協力をいただきながら地域移行を進めてまいります。
また、物価高騰の影響を受けている子育て世帯への支援として、学校、保育所等の給食費における食材価格上昇分の公費負担を継続し、来年度においても引き続き負担の軽減を図ってまいります。
市民・福祉関連施策
次に、市民・福祉関連施策です。
転入転出の手続や住民票の交付など市民の皆様の利用が最も多い市民総合窓口では、市民の皆様の利便性を第一に考えた「行かない窓口」、「待たない窓口」、「書かない窓口」を目指して取組を進めてまいりました。さらに、人件費を抑えつつ、安定的に質の高いサービスを提供していくため、デジタル化の推進と併せ、市民総合窓口の業務の一部を委託してまいります。
障がい者支援の推進については、社会福祉法人が行う生活介護事業所等の施設整備を支援することで、障がいの状況や希望に合わせたサービスの選択ができるよう、日中活動の場の確保を図ってまいります。
多様な年齢層で楽しめるeスポーツは、世代等を越えた交流や高齢者のフレイル、認知症予防に効果的とされていることから、より多くの方々から体験していただける機会や世代間交流の取組を充実し、更なる浸透拡大を図ってまいります。
健康維持の第一歩は、自分の健康状態をしっかりと知ることです。しかしながら、健診などの受診率は伸び悩んでいる現状にあります。受診者がより受診しやすくなるよう予約方法を見直すなど、手軽に健診などが受診できる環境整備を進めるとともに受診率が低い子宮がん検診等の受診勧奨を実施してまいります。
スポーツには、人々の心身の健康の保持増進や精神的な充足感の獲得、地域活性化など多様な側面があります。少子高齢化などを背景に人材等の資源が限られる中、スポーツ振興に向けて関係団体と連携し効果的な取組を行うために、三条市が目指す基本理念を明確にし、スポーツに関わる施策を計画的・体系的に整理した「スポーツ推進計画」を新たに策定してまいります。
また、スポーツ環境の充実に向け、総合運動公園の多目的広場のうち一面の人工芝化及び市民球場のスコアボード改修に着手するなど、総合運動公園のリニューアルを進めてまいります。
経済・建設関連施策

最後に、経済・建設関連施策です。
地域の企業と学生、学校関係者の交流機会が限定的である現状を踏まえ、専門学校生や高校生を対象に、地域企業の魅力を知ることができる説明会等を開催するほか、学校関係者と企業の関係を深める交流会を開催してまいります。
あわせて、それらに参加する企業を対象に、各企業が求める人材の特性を踏まえた効果的なアプローチを実践するための個別支援等を実施してまいります。
また、高校卒業時に限らず全世代で生じている女性の転出超過を抑制することを念頭に、この地域において柔軟な働き方が可能で、所得の向上も見込むことができる高度なエンジニアスキルの習得支援に取り組んでまいります。
さらに、他地域にない強みである三条市立大学の価値を最大限に生かすため、地域企業の発展に資する大学との更なるコミュニケーションの強化を期し、大学における研究テーマや企業の製品開発、技術開発上の課題等について意見を交わす連携交流会を開催してまいります。
くわえて、国内市場が今後更に縮小していくことを見据え、燕三条貿易振興会と共に台湾市場の開拓に引き続き取り組むほか、新たなビジネスチャンスを生み出すため、東京駅を始めとする多くの方が集まる拠点を通じたこの地域の製品や技術力の効果的な発信に取り組んでまいります。
インバウンド観光については、燕三条のものづくりへの関心が高く、購買意欲も旺盛な客層が多い台湾での現地イベントに関係事業者と共に出展し、燕三条の魅力を発信するとともに、燕三条エリアのものづくり企業見学体験ツアー等、この地域ならではのモデル旅行商品を紹介してまいります。
農業所得の向上を図るため、経営規模の拡大に取り組む農業者が行う農業用機械等の導入への支援を拡充するほか、中山間地域において、高収益作物の生産や加工商品開発と併せ、地元農産物や特産品の販路の開拓に取り組む地域商社の立ち上げを目指す農業者を後押しし、地域農業をけん引する農業者の創出に努めてまいります。
地球温暖化や中山間地域の高齢化、過疎化に伴う生産活動の低下などから、イノシシやサル等の野生動物の生息域が拡大しています。野生動物による農作物被害の防止、軽減に向け、関係団体や地域と連携した有害鳥獣捕獲活動を充実させるとともに、地域が行う被害防止対策への支援を拡充してまいります。
交流人口の拡大については、国道289号八十里越の開通効果を最大化させるために、引き続き、いい湯らていや道の駅漢学の里しただのリニューアルの準備を進めるとともに、下田地域のみならず、市内全域、更には県央エリアの観光資源を活用した滞在、周遊型旅行商品の造成等について新潟県や関係自治体と共に検討を進めてまいります。
道路ネットワークの強化については、引き続き、交通需要の変化を見据え、田島曲渕線等の都市計画道路整備や上須頃262号線等の市道整備を着実に進めるとともに、国道403号三条塚野目道路や国道289号バイパス(仮称)石上大橋下流橋建設の早期着手等に向け、各種期成同盟会を通じて関係機関に対して強く働き掛けてまいります。
おわりに
これまでに経験したことのないスピードで進む人口減少は、私たち三条市の存続を脅かしかねない脅威であり、次なる難局であることに違いありません。しかし、私は、複雑多岐に渡る課題が立ちはだかろうとも、市民の皆様と力を合わせれば、必ず乗り越えることができると確信しております。
今後とも、住んで良かったと皆様から思っていただけるよう、市民の皆様と共に更なる発展を目指して邁進してまいります。一層明るく、希望に満ちた未来を私たちで描いていきましょう。
何とぞ議会の皆様の御理解と御協力をいただき、御決定を賜りますようお願い申し上げます。
- この記事に関するお問合せ
更新日:2025年03月03日