令和6年度施政方針

はじめに

R6施政方針

   本日から、来年度各会計予算案を御審議いただくに当たり、私の来年度の施政方針を明らかにし、議会を始め市民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。

   私が三条市長に就任した頃は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、あらゆる社会活動、経済活動が制約を受け、先行きが不透明な状況でした。その中で私は、ふるさと三条を大切に守り育て、より良い未来へと確実に引き継ぎたいとの一心で、難局に立ち向かう決心をいたしました。

   そこで、「選びたくなるまち三条」を理想に掲げ、何よりもまず市民の皆様がこのまちでの暮らしに安心と満足を感じ、永きにわたってここに住み続けたいと感じていただける魅力あるまちづくりを強く意識し、様々な施策を展開するとともに、このまちの活力を維持していくためにも、市外、県外から三条市に魅力を感じて移住してくる人を増やす取組も行ってまいりました。

   その結果、今年度の市民アンケート調査では「市内で暮らし続けたい」と回答する割合が2年前の60.1パーセントから13.2ポイントも上昇しました。また、まちの良い変化が若い世代にも認知され、市外や県外からの40歳代以下の年間移住者が、2年前から300人以上増加しました。今では、テレビ番組などにおいて、三条市が「移住したいまち」の全国ランキング上位のまちとして紹介されることが増えています。

   三条市全体に広く目配りし、市民一人一人の安心や幸福につながることを考え抜き、着実に実行してきたことの現れであるものと捉えております。

   具体的には、私たち三条市の類いまれなものづくりの精神と技術によって世界でも認められている製品や高品質な農産物について、全国に向けて発信することで認知度を高めてまいりました。その結果、ふるさと納税においては、昨年度にはかつての7倍である50億円もの御寄附を全国から頂きました。そのふるさと納税で得られた財源を活用し、これまで以上にこのまちで安心して子育てをしていただくため、子ども医療費の助成拡充やインフルエンザワクチン接種費用の助成といった支援策を充実させるとともに、市民の要望がありながらも今まで十分にできていなかった道路環境の大幅な改善なども実行してまいりました。

   これまで不安を感じる市民が多かった医療分野においては、本日、3月1日に、県央地域における救急医療の中核を担う済生会新潟県央基幹病院が開院しました。開院までの間、三条市では看護師等の確保支援や病院へのアクセス道路整備、市民に向けた説明会の開催など、市としての責務を果たしてまいりました。開院と合わせて、同病院を核に地域の各医療機関が役割分担し、急性期から回復期、慢性期まで相互に連携する「地域がひとつの病院」として機能する新たな医療提供体制もスタートしました。

   また、社会的弱者等への支援は行政の最も重要で基本的な役割であると考えております。そこで、障がい者の社会参画支援やマイノリティへの配慮促進といった、誰もが共に自分らしく暮らすことのできる地域づくりを大きく前進させてまいりました。

   一方、市内における今年度の年間出生数は10年前と比較して4割近く減少するなど、少子化と人口減少の影響は大きく、対応を迫られる課題が増加しています。個人では解決困難な悩みを抱えている子育て世帯や社会的弱者もまだまだいます。また、国内の消費、労働市場は縮小していくことが見込まれる状況下において、唯一無二の存在である「ものづくりのまち」を持続的に発展させていくためには、新たな海外市場の開拓や人材確保の取組は待ったなしの課題です。

   このまちを持続可能なものとするためには、これからも決して諦めることなく、積極果敢にまちを進化させることが必要です。一見地味であっても着実に、このまちに暮らす全ての方々の幸せにつながる取組を加速する、それが、今、私が、市長としてやるべき使命と考えております。こうした信念の下、三条市の更なる発展に向けて令和6年度に実施する具体的な取組について説明を申し上げます。

子どもが健やかに育つ環境づくり

   変化の激しい時代にあっても、このまちの宝である子どもたちが、自ら自分の未来を切り拓き、生きる力を身に付けるためには、教育環境の更なる充実が必要です。また、誰もが安心して子育てを楽しみ、子どもを育てることへの喜びを十分に享受できる、子育てしやすい環境づくりも必要です。

   これまで、子どもの学びの基盤となる教育システムの深化や子どもが伸び伸びと学習に打ち込める学校環境の整備、個に応じた支援の充実を進めてまいりました。くわえて、子育て世代の不安を減らすため、精神的及び物的な支援の拡充、保育環境の充実も図ってまいりました。

   来年度には、子どもにとっての適切な集団規模に合わせた教育環境の在り方の検討と児童・生徒の学びを支える教育システムの更なる深化、支援を必要とする人に対する自立に向けた支援強化を重点的に進めてまいります。

   学校は児童・生徒が集団の中で多様な考えに触れ、切磋琢磨することを通じて個々の資質や能力を伸ばすことができる場所として、一定の集団規模が確保されていることが理想です。少子化が更に進行する将来においても、活力ある学校教育を継続できるよう、小学校及び義務教育学校前期課程の在り方について総合的に検討を進めてまいります。

ICT授業風景

   本来、学びは楽しいものでなければなりません。未来を担う児童・生徒には時代に合った学びも必要です。一人一人の力量に応じた学習を提供することのできるAIを活用した教育ツールを導入し、学校のみならず家庭においても主体的な学びを促進して学力の向上を図ってまいります。

   また、これまで学校の普通教室と理科室への無線LANと空調設備の設置を実施してまいりましたが、来年度は残りの教室への設置を進め、学習環境をより充実させてまいります。

   くわえて、登校に不安を感じている児童・生徒が少しずつでも前進し、学びを止めることのないよう、不登校児童生徒支援員を増員し、その不安に寄り添った対応ができるよう体制を強化してまいります。

   経済的な自立を目指して自らの力で未来を開拓しようとするひとり親世帯に対する支援を強化するため、就業に向けた資格取得を支援する高等職業訓練促進給付金や教育訓練を受けるための支援をする自立支援教育訓練給付金を拡充してまいります。

持続可能で個性的な地域産業の振興

   目まぐるしく移り行く社会情勢や経済状況下において、このまちが将来にわたって「ものづくりのまち」であり続けるためには、現在のまちの優位性に甘んじることなく、時代の潮流を捉えて先手先手を打ちながら、自らの手で新たな未来を切り拓き続けなければなりません。

人材確保

   これまで、「ものづくりのまち」としての持続的発展性を高めるための指針である「三条市経済ビジョン」に基づく施策の展開と更なる打ち手の検討を進めてまいりました。

   全国的に顕在化している人材不足は、手をこまねいていては、ますます深刻な事態をもたらします。また、折しも、約1年後には三条市立大学から初の卒業生が輩出され、社会に羽ばたく節目を迎えます。そこで、来年度は、既に始動している施策に加え、これまで必ずしも十分なアプローチができていなかった学生も含め、幅広い対象に向けた人材戦略を展開してまいります。

   全国の大学生等の約半数が奨学金を受給している状況を踏まえ、Uターン者や三条市立大学の卒業生等で市内に居住及び就職した方に対して新たに奨学金返還の支援に取り組み、市内企業への就職等を促進してまいります。

   将来、このまちのものづくりを担う人材となり得る学生等に向けて、市内の企業の魅力を認識していただくため、説明会や企業見学会を開催するほか、学生の進路選択に影響力のある学校関係者と企業との関係構築を支援してまいります。

   また、生産年齢人口の減少が見込まれる中、国内労働力のみに依存することは難しいことから、外国人材の受入れ促進に取り組んでまいります。具体的には、受入れ企業の不安解消や意識醸成を図るため、セミナーの開催や外国人材の橋渡しを担う団体との個別相談会を開催するとともに、受入れには外国人材の働きやすさと生活のしやすさの確保も必要であることから、就業環境や生活環境の整備を促進するための支援にも取り組んでまいります。

   人を大切にした経営を行うことは、人材の確保、定着はもちろんのこと、企業の成長にもつながる重要な要素です。そのため、今年度から実施している、専門家による企業への労働環境改善支援の取組を継続し、従業員が安心して働くことができ、意欲的に仕事に取り組める労働環境を整えることで、より多くの企業が「働きたい企業」として選ばれるよう支援してまいります。

   これらの人材戦略に加えて、ビジネスにおける脱炭素推進の重要性が高まっていることを踏まえ、企業の競争力を維持、強化するため、企業に対して、温室効果ガスの排出量削減計画の策定と、脱炭素経営を実践していることを示す国際認証の取得の支援をしてまいります。

   農業分野では、生産者の安定的で効率的な農業経営を促すための支援と併せ、高いポテンシャルを有する米や果物を始めとした私たち三条市の農産物のブランド価値を更に高め、その魅力を広く訴求する取組を行ってまいりました。既に国内で消費者から高い評価を得ている「しただ米」においては、国内のみならず海外においても精力的に販路開拓の活動を行ってまいりました。これにより、「しただ米」の販売に参画する農業者、販売量ともに増加しています。

   また、果物においては、首都圏の人気パティシエを招へいした農園ツアーやパティシエと連携したスイーツ販売を実施し、当市の魅力ある果物の認知を広めることができました。

   来年度には、農産物のブランド価値の発信による認知度向上とともに、国内外における新たな販路開拓を引き続き推進してまいります。

   特に、海外での農産物の販路開拓においては、国内需要の縮小による経営リスクを回避し、地域農業の持続性、発展性を獲得するため、日本の農産物に対する関心が高く、販売先としての伸びしろが期待できる国での商談会や展示会の開催など、当市の米や果物などの品質の高さを発信する先駆的なプロモーション活動に取り組む農業者等を支援してまいります。

   交流人口の拡大については、来訪者増加に向けて、先人たちが守り残してきた豊かな自然とものづくり技術という当市の魅力を様々な媒体で積極的に情報発信してまいりました。また、国道289号八十里越区間の開通を見据え、八十里越街道における観光資源の発掘と磨き上げに取り組み、福島県只見町や南会津町の事業者と市内の事業者による数々の連携商品を生み出してまいりました。

   今年度行った「アウトドアのまち三条」宣言に基づき、来年度は、アウトドアも含めた観光の目的地としての認知度を高めるため、関係団体と密に連携し、当市の魅力を更に発信してまいります。

   くわえて、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行に伴い、大きく回復している国内のインバウンド需要を当市においても取り込むため、アウトドアファンが多いとされる米国における旅行会社をターゲットとしたファムトリップツアーの実施により、認知度向上と具体の観光商品の造成につなげてまいります。

   また、国道289号八十里越区間の開通時期が令和8年秋から令和9年夏までの間との見込みが示されました。開通後に当市が単なる通過点となることなく多くの方々に訪れていただくための取組として、八木ヶ鼻温泉「いい湯らてい」について、これまで以上に多くの方々が魅力を感じて立ち寄り、再訪していただくためのリニューアルに向けた具体の検討を進めてまいります。あわせて、越後・南会津街道観光・地域づくり円卓会議を始めとした関係者との議論を通じ、機運醸成や広域的な旅行商品の造成に向けた取組などを着実に進めてまいります。

健康で心豊かに暮らせる環境づくり

   市民の健康を守るためには、充実した医療提供体制の整備に加え、一人一人が自らの健康に対して主体的に考え、健康づくりに向けた望ましい行動をとるよう促すことが必要です。また、誰もが生き生きと暮らし続けるためには心の健康を守り、維持していくことも重要です。

   そのため、先に述べた済生会新潟県央基幹病院の開院に向けた取組と併せて、疾病の早期発見、重症化予防に向けた取組や高齢者へのスポーツ施設の利用促進、地域における支え合いの体制づくりを進めてまいりました。

   来年度には、地域医療の安定的な運営に必要な方策に加え、様々なアプローチを通じて自分の健康は自分で守るという意識を向上させる取組を行うとともに、誰もが心豊かに暮らすため、支援を必要とするより多くの人を支える体制強化を重点的に進めてまいります。

   医療を安定的に提供するために必要となる人材の確保に向け、転入し、市内の医療機関で勤務する看護師等に対する経済的支援を継続するほか、新たに県と連携し、将来、医師として済生会新潟県央基幹病院で働く医学部の学生に対して修学支援を実施してまいります。

さんちゃん健康体操

   自身の健康状態の把握と健康づくりに向けた行動を促すため、新たな健診施設を活用した健康診査等の充実を図るとともに、国民健康保険被保険者に対し、発症者の多い脳血管疾患の発症要因の一つである糖尿病等の生活習慣病の予防対策として、血糖モニタリング機器を活用した生活改善の動機付けを行ってまいります。あわせて、80歳になるまでに約3人に1人が発症すると言われ、後遺症や合併症のおそれのある帯状疱疹について、ワクチン接種費用を助成することで発症予防等の促進を図ってまいります。

   また、生産年齢人口の50人に1人いるとされているひきこもりを始めとしたどの分野にも当てはまらなかった相談も取りこぼすことなく対応できるよう、分野横断的に相談を受け止めて支援を行う重層的な支援体制を拡充してまいります。

全ての人の尊厳を守るまちづくり

ツナガルフォーラム

   誰もが自分らしく暮らせるまちの実現には、多様性を認識し、様々な分野において互いを尊重し合える社会の形成が必要です。

   昨年度、「三条市障がいのある人もない人も共に自分らしく暮らすためのまちづくり条例」を制定し、様々な機会を通じてその趣旨の周知に努めてまいりました。共生社会の実現に向けた取組を積極的に実施する事業者の認証制度なども通じて、共に認め合い助け合うといった基本的な考え方が広がりつつあると捉えております。

   学校においては、いじめ問題への対策として教員が児童・生徒の状況を迅速に把握できるWEBアンケートを導入し、いじめの徹底した早期発見、早期対応に取り組んでまいりました。

   また、高齢者虐待については、支援方法等の検討に弁護士も加えることで幅広い知識や様々な経験を踏まえた対応につなげています。

   ただ、全ての人の尊厳を守るまちの実現は一朝一夕にできるものではありません。必要な取組を地道に継続し、一人一人の理解を着実に深めていくことが肝要です。そのため、来年度においても、私たちが理想とする誰もが自分らしく暮らせるまちの姿を継続的に発信し、理解促進を図るとともに、時代の変化に合わせた環境整備を重点的に進めてまいります。

   まず、相互理解を進める啓発イベントの開催に加え、いじめや虐待、ハラスメントの防止に向けた取組を継続してまいります。

   また、認知症高齢者など判断能力に課題を抱える方の増加に伴い、本人の生命、財産等の権利擁護を目的とした成年後見制度に対する更なる需要の拡大が予測されるため、後見人等の確保のための取組が急務となっています。そこで、社会福祉法人三条市社会福祉協議会と連携し、同協議会が実施する法人後見事業の拡充に向けた支援を行い、後見人等の確保に努めてまいります。

   さらに、様々な事情により親族からの支援を受けられないなど身寄りのない高齢者等について、新たに医療、介護、司法等の多職種による協議の場を設け、課題解決や支援方法のガイドライン策定等をすることにより、適切な支援の実施につなげてまいります。

 

住み良い地域づくり

   住み良い地域づくりには、道路ネットワークの強化や公共交通の利便性の向上に加え、空き家対策や防犯対策の推進などによる生活環境の充実に取り組むことが必要です。

のるーと三条

   公共交通については、利用者の利便性を高めるとともに、効率的な運行を通じて将来的にも持続可能な運行体系を構築するため、まずは市街地エリアにおいて、これまでのデマンド交通にAIによる配車システムを導入し、乗り合いによるAIオンデマンド交通の実証実験を行ってまいりました。運行開始以来、高齢者を中心に幅広い世代の方々に利用していただいており、開始当初に比べて利用者が増加しています。

   来年度は、AIオンデマンド交通の本格導入を視野に、高齢者等に配慮したより利便性の高い公共交通の実現につなげてまいります。

   空き家対策の推進については、空き家の所有者と利活用したい人とのマッチングや空き家に関する学びの場の提供等による流通促進と併せて、破損などで周囲に影響を及ぼすおそれのある特定空家の解体を目的とした補助制度を創設し、解体促進を行ってまいりました。

   来年度は、専門的な知見をこれまで以上に活用することにより空き家の利活用の促進を図るとともに、将来的に特定空家になることを未然に防止するため、特定空家に至らない管理不全空家の解体費用を補助する制度を創設し、今後急速に増加が懸念されている空き家への対策を進めてまいります。

   社会資本の適切な管理として進めてきた包括的維持管理体制については、嵐南地区と大島地区を加えて市内全域を対象とし、道路や公園などの効果的、効率的な維持管理を推進するとともに、引き続き、建設技術者の育成支援を行い、その担い手である建設業者の経営の安定化にもつなげてまいります。

災害に強いまちづくり

   元日に発生した令和6年能登半島地震では、改めて、災害はいつ襲ってくるか分からないと痛感したと同時に、あらゆる可能性を想定した十分な備えが重要であると認識しました。これまで、木造住宅の耐震改修を促進する支援や発災時に迅速に対応するための職員の訓練も行い大規模地震の発生に備えてまいりましたが、この度の地震を受け、対応にまだまだ改善すべき点があることを認識いたしました。

   大規模地震が発生した際、市は震災対策本部を設置し、直ちに市民を守る対応を開始しなければなりません。市役所三条庁舎は令和2年度までに耐震強化を施してきましたが、万が一、三条庁舎が災害時の司令塔としての機能を失った際には栄庁舎に本部機能を移すことになるため、同庁舎に必要な通信環境の整備を行ってまいります。

消防団の活動

   また、災害などの突発的な断水時に備えて給水車の増車及び自走式仮設水洗トイレカーの導入など、引き続き災害への備えを行うとともに、自助、共助、公助を上手く機能させた市全体の災害への対応力の向上にも努めてまいります。

   今年は、死者9名、被害棟数1万棟以上の甚大な被害をこのまちにもたらした7.13水害の発生から20年となる節目の年です。この災害を経験したことのない人が増えている中、水害の教訓を忘れずに次世代に伝承し、水害に対する備えに万全を期するため、国、県、関係機関と連携して信濃川下流総合水防演習を行い、消防団やライフライン事業者、自治会等と連携した訓練の実施に加え、イベント性を持たせることで市民の参加も促し、地域社会全体の防災意識の向上を図ってまいります。

   さらに、内水による家屋の浸水被害や道路の冠水被害の軽減を図るため、これまで進めておりました排水路整備や、嵐北地区の3か所の雨水調整池整備事業を引き続き進めてまいります。

令和6年度予算案の概要

   令和6年度の当初予算編成に当たっては、ふるさと三条応援寄附金によって確保した財源等を活用し、教育環境の充実等による子どもの育ちへの支援のほか、人材確保や販路開拓等による地域産業の振興などに予算を重点的に配分するとともに、先行きが不透明な物価高騰の影響や人件費の増加による経常経費の増加に対応するため、事業の見直し等を行いながら編成を行いました。

   この方針に基づき、一般会計予算案は、総額を500億7,100万円、対前年度比では29億6,600万円、6.3パーセントの増としました。

   主要な財政指標につきましては、今年度決算見込みと比較して、経常収支比率は、3.6ポイント高い100.2パーセント、実質公債費比率は、0.1ポイント低い14.4パーセント、財政調整基金残高は、物価高騰の影響などにより、約5億円減少し、約94億円となるものと見込んでいます。

   これらの指標のうち経常収支比率及び財政調整基金残高については、物価高騰の影響が継続した場合には今後も悪化が見込まれますが、引き続き、適切に事業の見直し等を行いながら、健全財政を維持してまいります。

   国民健康保険事業特別会計予算案は、総額を81億6,760万円としました。令和6年度の国保税率については、基金を活用して被保険者の負担増を抑え、据置きとします。来年度から令和11年度までの保健事業や特定健康診査等の目標と内容を定めた実施計画に基づき、特定健康診査の受診を促進するとともに、生活習慣病の発症予防、重症化予防に重点的に取り組み、被保険者の健康の維持増進に努めてまいります。

   後期高齢者医療特別会計予算案は、総額を14億9,770万円としました。本制度の適正かつ効率的な運営を図るため、広域連合と連携して高齢者の保健事業と介護予防事業を一体的に実施してまいります。

   介護保険事業特別会計予算案は、総額を106億880万円としました。令和6年度から令和8年度までを計画期間とした三条市高齢者福祉計画・第9期介護保険事業計画に基づき、持続可能な介護保険サービスの提供体制の整備や地域共生社会実現に向けた仕組みづくりを進め、これまで構築してきた「地域包括ケアシステム」の更なる深化・推進に取り組んでまいります。この計画期間中における介護保険料の基準額については、介護給付費準備基金を活用することで被保険者の負担増を抑え、据置きとします。

   水道事業会計予算案は、収益的支出を20億8,198万4千円、資本的支出を10億1,753万8千円としました。引き続き、計画的な配水管の布設替えによる水道管路の耐震化に取り組みながら、良質な水道水の安定供給に努めてまいります。

   下水道事業会計予算案は、収益的支出を25億1,112万3千円、資本的支出を33億6,644万8千円としました。雨水については、近年の豪雨を踏まえ、引き続き雨水調整池等の整備を進め、浸水リスクの軽減に取り組んでまいります。汚水については、老朽化した施設において計画的に長寿命化を図り、適切な維持管理に努めてまいります。

   次に、これまで申し上げてきたもののほか、来年度の主な事業について説明を申し上げます。

総務・文教関連施策

   まず、総務・文教関連施策です。

   全国的に人材不足が深刻化しています。この流れは一事業所である三条市役所も例外ではありません。これまでに実施したオンラインによるコミュニケーションツールの導入や庁内無線LANの整備といった職場環境の改善に加え、今後はDXを進め、更なる行政運営の効率化を図るとともに、職員採用専用サイトを拡充し、三条市職員として働く魅力の発信に努めることなどにより、行政サービスの担い手を確保しつつ、その育成に努めてまいります。

給食風景

   さらに、物価高騰の影響を受けている子育て世帯への支援として、引き続き、学校、保育所等の給食費における食材価格の上昇分の公費負担を行ってまいります。

   全国的に慢性化している保育士不足については、急な保育士の欠員にも柔軟に対応できるように、私立保育園が行う、保育士のネットワークを活用した紹介制度による人材確保を支援してまいります。

   また、令和4年度までに市内全ての学校の玄関への設置を完了したオートロックについて、児童クラブや保育所、保育園等への設置も進めることで不審者の侵入を防ぎ、子どもの安全確保をより確実なものとしてまいります。

市民・福祉関連施策

   次に、市民・福祉関連施策です。

   移住促進支援については、移住者の更なる増加に向けて、これまで実施してきた取組に加え、先に述べたUターン者等に対する奨学金返還の支援にも取り組んでまいります。

   歴史文化の魅力の発信については、高校生や大学生との意見交換や文化財等についての動画配信を行い、私たち三条市の歴史文化資源の魅力を若者世代の感性に響くよう発信し、地元愛の醸成につなげるとともに、市外からの来訪のきっかけとしてまいります。

   がん治療を受ける人への支援については、治療による外見の変化により、社会とのつながりや人間関係の維持に困難を感じる方がいることから、本人の精神的苦痛や経済的負担を軽減し、治療を続けながら自分らしく日常生活を送ることができるように、医療用ウィッグ等の医療用補正具の購入費用を助成してまいります。

障がい者支援施設

   障がい者支援の推進については、強度行動障がい者等への日常生活支援を行う施設の不足解消に向け、社会福祉法人が行う生活介護事業所等の施設整備を支援してまいります。さらに、障がい者の創作活動や地域社会との交流機会の場となる地域活動支援センターを整備し、個々の状況に応じた活動を行うことができる環境整備に取り組んでまいります。

   コンピュータゲームにより、年齢や性別、障がいの有無にかかわらず誰もが対戦を楽しめるeスポーツについて、介護予防教室のプログラムの一つとして導入し、高齢者のフレイル予防につなげるほか、ユニバーサルスポーツの一環として大会や体験会を実施し、世代や障がいの有無を問わない多様な交流促進を図ってまいります。

   スポーツ環境の充実のため、総合運動公園の多目的広場の人工芝化に向けた実施設計に着手するほか、公園施設のリニューアルを検討してまいります。

   また、多くの市民が訪れる市民総合窓口における手続をよりスムーズにするため、総合案内や手続のサポート、証明書の交付等のサービスを集約したコンシェルジュデスクの設置や、記載を省略できるシステムの導入などにより、市民の利便性の向上を図ってまいります。

経済・建設関連施策

   最後に、経済・建設関連施策です。

   市内企業等における事業承継の推進については、今年度実施した企業調査の結果に基づき、企業の意識変容を促すセミナーや事業承継に関心のある企業への個別支援など、企業の実状に応じた取組を行うことで、産業基盤の維持、発展につなげてまいります。

   鍛冶人材の確保と育成については、これまで進めてきた育成事業を踏まえ、より多くの意欲ある人材を確保するための必要な見直しを行い、鍛冶技術の継承に向けて取り組んでまいります。

   農業収益の増加に向けた取組については、経営面積の拡大やより収益性の高い園芸作物への転換を促すため、引き続き、農業機械等導入補助金などにより支援してまいります。また、農地の集積化を推進するための地域計画の策定やほ場整備について、関係機関と連携して実施してまいります。

上須頃262号線整備予定区間

   道路ネットワークの強化については、済生会新潟県央基幹病院へのアクセス向上のため市道上須頃262号線の道路整備を引き続き進めてまいります。また、県が整備を進めている国道403号三条北バイパスの開通により、交通量の増加が予想される市道大島荻島線の道路拡幅を着実に進めてまいります。さらに、JR信越本線牛ヶ島踏切について、改良と交通規制の見直しを行い、大型車を適切に誘導することで、道路交通の円滑化と交通の安全確保につなげてまいります。あわせて、新保裏館線(北工区)の整備を進めるとともに、国道403号三条北バイパス延伸、国道289号バイパス(仮称)石上大橋下流橋建設及び国道289号バイパスとなり得る都市計画道路大島大崎線の早期着手につきましても、国道289号バイパス(仮称)石上大橋下流橋等建設促進期成同盟会などを通じて、引き続き、関係機関に対して強く働き掛けてまいります。

おわりに

   今、私たちは、常識を覆すような社会変化が次々と発生し、将来の予測が困難な試練の時代を迎えています。直面している人口減少は、地域コミュニティの機能や生活の利便性、社会経済の活力の低下を引き起こし、更なる人口減少を招くといった負のスパイラルにもつながりかねません。

   しかし、最善の道を見い出し、一歩一歩着実に進んでいくことで、逆境の中であっても人々の幸せを高め守り抜くことができる三条市を築くことができると信じています。

   この難局を私たち三条市が進化するチャンスと前向きに捉え、市民一人一人の声に真摯に耳を傾け、苦境に積極果敢に立ち向い「選びたくなるまち三条」の実現に向けて全力で邁進してまいります。

   何とぞ議会の皆様の御理解と御協力をいただき、御決定を賜りますようお願い申し上げます。

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更新日:2024年03月01日