所信表明
はじめに
令和6年三条市議会第4回定例会に臨み、所信表明の機会をいただきありがとうございます。
2期目におきましても、市民の皆様の声に真摯に耳を傾けながら、諸課題に全力で取り組み、私たち三条市の発展のために邁進してまいります。
それでは、ただ今から、今後の市政運営に際しての私の基本的な考え方を申し述べます。
1期4年を経て、三条市が素晴らしいまちであるとの思いは、自信から確信に変わりました。変化に対応して挑戦を続ける力強い産業。私たちの三条市を少しでも良くしようとまちづくりにプレーヤーとして携わっている多くの方々。三条市を愛し、応援してくださる市民の皆様。私が担う役割は、皆様の期待に応え、素晴らしい私たちの三条市を更に素晴らしいまちにすることです。
この「更に素晴らしいまちにする」というのは、私たち三条市の発展という意味のみならず、もしかすると耳障りの良くないような現実的な課題にも向き合って解決に導いていくことも含まれます。我が国は、これまでに経験したことのないスピードで進む人口減少、これに伴う生産年齢人口の減少、経済活動や人口などの過度な東京一極集中、また、自然災害の頻発・激甚化など大きな時代の変化に直面しております。
特に、人口減少に着目すれば、国立社会保障・人口問題研究所によると、現在約9万1,000人である私たち三条市の人口は、令和32年には約6万3,000人になると推計されております。この将来人口推計を見据えたときに、今後新たに取り組むべき政策に常に思いを巡らせることはもちろんのこと、現在私たち三条市が行っているあらゆる事業について、継続すべきもの、縮小・見直しをせざるを得ないものなど、その在り方を問われる時機が来ていると感じております。
このような中で、私たち三条市が他地域に埋没せず、力強く生き抜いていくために、私はこれまでの4年間の政策を更に深化し、三条市らしさを追求しつつ、変化に対応した取組を行っていかなければなりません。
これからも市民の皆様のために、私たち三条市を更に選びたくなるまちにしていくため、「産業の更なる発展」「教育・子育て環境の充実」「医療・福祉の充実」「持続可能なまちづくり」「道路インフラの整備」を政策の柱として各種の施策を推進してまいります。
1 産業の更なる発展 ~世界に自慢できる三条へ~

我々は、世界規模で拡大した感染症によって人々の活動制限が強いられた状況にあっても、先人たちが培ってきた「ものづくり」の技術を生かし、社会の需要に応える製品を生み出し、人々の生活様式の変化を捉えた販路開拓などを進め、落ち込んだ経済を回復してきました。
しかしながら、昨今の世界情勢の不安定化が招いた原材料高騰による生産コスト上昇、そして人口減少による働き手不足の深刻化や市場縮小がもたらす経済活動の後退への懸念といった、新たな不安を目の当たりにしています。
どのような困難があろうとも、私たち三条市がこれから先も国内はもとより海外でも更に知名度を上げ、「ものづくりのまち」として認知され続けていくためには、これまで以上にいち早く社会の変化やニーズを察知し、人々の暮らしを更に豊かにする製品づくりやサービスの提供に結び付け、多くの方々の評価や信頼を得ていくことが必要です。そのための重要な要素の一つは担い手となる人材です。一昨年度策定した三条市経済ビジョンで掲げた「よくつくる、よくいきる」のテーマが表すとおり、人材への投資により重きを置き、一人一人が生き生きと働くことができる労働環境を整えることで付加価値が創出され、企業価値向上につながる、そのような好循環を実現する企業が増えるよう、一層の産業支援を行ってまいります。
また、私たち三条市は、地域産業に資する最新技術と知識を学べる環境を備えた三条市立大学を有しております。三条市立大学の学びの環境の更なる充実を図り、地域経済の発展に寄与する人材育成につなげるとともに、同大学と企業との連携により、地域産業が抱える課題の解決に導いてまいります。
私たち三条市は、工業分野における優れたものづくりの技術や製品だけではなく、恵まれた自然環境や土壌に育まれた風味豊かな農産物を生産する地でもあります。品質の高い農産物の生産の維持、拡大に向けた取組を進めながら、それぞれのおいしさや特長を多くの方々に知っていただくために、米や野菜、果物をトップセールスで発信してまいります。そして、三条産農産物を多くの方々から味わっていただき、新たなファンを創出することで更なる需要の喚起を図ってまいります。
令和4年度に50億円を超える過去最高の納税額を記録したふるさと納税は、「ものづくりのまち三条」ならではの工業製品や農産物を始め多様な返礼品が魅力となり、多くの方々から支持をいただいています。これからも事業者の御協力をいただきながら更に返礼品を充実させ、私たち三条市のシティセールスにつなげるとともに、更なる財源の確保に積極的に努めてまいります。
2 教育・子育て環境の充実 ~「ひとづくりのまち」三条へ~
子どもは、私たち三条市、ひいては我が国の将来を担っていく大切な宝です。私たち大人には子どもたちの健やかな成長を支え、輝かしい未来に導いて行く責務があります。私たち三条市の出生数は、10年前の平成26年には720人、5年前の令和元年には593人、令和5年には425人と急激に落ち込んでいます。この現実から目を背けることなく、子どもに関わる様々な環境について、その在り方を考え、判断しなければいけない時機が到来しております。とりわけ、子どもたちの学び、成長の重要な基盤である学校の在り方は、時機を逸することなく方向性を見いださなければなりません。このまちの将来を担っていく子どもたちが学び、育っていくためには学校がどうあるべきか、今年度設置した未来の学校検討委員会において議論を行ってまいります。
また、義務教育のみならず、新潟県が検討を進めている県立高等学校の在り方についても、市内に4校が立地する自治体として、私たち三条市が当該県立高等学校に期待する役割を新潟県に伝えてまいります。
将来ばかりに目を向けるのではなく、目下にある課題についても着実に取り組み、未来につないでいかなければなりません。
全国的に課題となっている教員の多忙化は、将来的に教員が児童・生徒と向き合う時間的余裕がなくなり、児童・生徒の学力や人間力、変化する時代の中で生き抜く力を育んでいくことに深刻な影響を与えることが懸念されます。ICTの活用などにより、これまで以上に教員が児童・生徒一人一人と十分に向き合い、学習指導や生徒指導に注力できる時間を確保するための環境整備を推進してまいります。
学校教育に限らず、子育てについては、多くの方々が精神面や環境面、経済面などに関して多様な不安や悩みを抱えています。子育て世帯の皆様から少しでもそういった不安や悩みが払拭され、誰もが安心して子育てに集中して取り組めるよう、様々な場面に応じた支援を行ってまいります。
くわえて、近年、子どもたちを取り巻く環境が多様化、複雑化する中、子どもたちが抱える問題も複雑多岐にわたっており、必要な支援も同様に、より重層的かつきめ細かな対応が求められております。様々な困難を抱える子どもたちが取り残されることなく、それぞれの個性、特性に合わせた成長を遂げられるよう、個に応じた切れ目のない支援体制の構築に一層注力してまいります。
3 医療・福祉の充実 ~安心して住み続けられる三条へ~

誰しもが将来にわたってはつらつと元気よく充実した日々を送りたいと願うものです。しかし、その思いとは別に、心身の不調に陥ることも起こり得ます。そのようなとき、身近な所で安心して必要な治療を受けるためには、生命と健康を守る医療の受け皿が地域で整っていなければなりません。
今年の3月、救急医療・専門医療・災害医療を担う済生会新潟県央基幹病院が開院し、県央地域における医療提供体制の充実が図られました。
しかし、超高齢化の進行や慢性疾患の増加による医療需要の増加を見据えると、医療人材確保はもとより、地域の医療資源の効率的な活用などにより安定した医療提供体制を維持していくことが必要です。そのため、済生会新潟県央基幹病院を中心に他病院、診療所等の医療機関が連携し県央地域が一つの病院として機能するよう、三条市医師会を始めとする関係機関と共に持続可能な仕組みづくりを行うとともに、引き続き医師・看護師の確保に取り組んでまいります。
また、年齢を重ねても可能な限り住み慣れた地域で暮らしていただくためには、一人一人の心身の状態や置かれている家庭環境等に応じた適切できめ細かな支援を受けられることが不可欠であり、そのためには、支援を行う介護・福祉といった各分野のサービス提供基盤の充実が必要です。とりわけ、介護人材については、人口減少、少子高齢化が一層顕著になると推計されている令和22年には人材不足によりサービス提供に深刻な影響を与えることが懸念されております。介護保険制度の運営は、安定的な介護サービス提供体制が基盤となるため、行政と介護事業者が共に対策を考え、介護人材の確保や定着を図る取組を進めてまいります。
このように、この地域で安心して暮らし続けられるよう、将来にわたり医療・介護サービスが提供できる体制を堅持することを基本とし、在宅生活支援や介護施設の充実を図るとともに、医療機関と介護施設との連携を強化し、地域包括ケアシステムの更なる深化を進めてまいります。
少子高齢化が進み、核家族が増え、人との関わりの希薄化が進んでいる社会だからこそ、年齢や性別、障がいの有無などにかかわらず、人と人同士がつながり合い、それぞれの人格や個性を尊重し合い、支え合える共生社会の実現が強く望まれます。一昨年度制定した「三条市障がいのある人もない人も共に自分らしく暮らすためのまちづくり条例」を基に、多様性への受容と寛容のある共生社会への転換に向け、“ツナガル”プロジェクトを通じ、地域全体での気運を醸成してまいります。
4 持続可能なまちづくり ~将来も持続可能な三条へ~

これまで私たち三条市では、「まちなか」と呼んでいる中心市街地は「まちやま」と「たいぶん」を核に、人々が出掛けたくなる活気ある多彩な交流を生み出すエリアとして、「栄地域」は栄スマートインターチェンジに近接した工業流通団地を有する生産と流通の拠点となるエリアとして、また、「下田地域」はアウトドアのまち三条の中心地とし、大自然の中でアウトドア・アクティビティが楽しめるエリアとして位置付けるなど、それぞれの地域の魅力を生かしたまちづくりを進めてまいりました。その中で、上越新幹線の停車駅である燕三条駅の周辺については、北陸自動車道の三条燕インターチェンジ、道の駅燕三条地場産センターもあることで、私たち三条市の玄関口としての機能を果たしております。近年では、新たに三条市立大学や済生会新潟県央基幹病院も加わり、商業施設も含め多様な都市機能を備えた地域へと変わりつつあります。市全体の人口が減少する中で、燕三条駅周辺を含む須頃地区の人口は増加傾向にあり、今後、まだまだ伸びしろのあるこの地区を更に魅力あるエリアとしていくことが、私たち三条市の魅力向上にも寄与することから、今後のあるべき地域づくりについて検討を始めてまいります。
さらに、下田地域では、国の事業決定から40年を迎えようとしている大事業である国道289号八十里越について、遂にその開通時期が令和8年秋から令和9年夏と具体的に示されました。開通により、三条市へのアクセスが大きく改善し、福島県側から三条市を訪れる方が増加すると見込まれることから、このエリアも三条市の玄関口として重要な機能を担っていくこととなります。この好機を見据え、下田地域の魅力を更に高め、開通後に三条市が単なる通過点となることなく多くの方々に訪れていただくため、いい湯らていと道の駅漢学の里しただのリニューアルを進めてまいります。
また、三条市のどこにいても安心できる環境づくりも重要です。「観測史上初めて」というフレーズを毎年聞くように、昨今の気候変動に備えていくためには、これまでの防災対策に満足せず、これからも万全を期していかなければなりません。想定されるリスクを踏まえ、雨水調整池の整備等を更に積極的に進め、降雨時の水害リスクを軽減し、市民の皆様が安心して暮らせる環境を整備するとともに、関係団体の御協力もいただきつつ、災害発生時の体制強化を図るなど、水害や地震を始めとする各種災害に強いまちづくりを更に進めてまいります。
5 道路インフラの整備 ~「道づくり」を「まちづくり」につなげる三条へ~

道は、買い物や通勤通学、通院などの日々の暮らし、物流を始めとした経済活動、さらには、救急搬送時や災害時など皆様の命を左右する局面、これらの全てにおいて、重要な役割を担っております。これまで申し上げてきた様々な政策の実現のみならず、私たち三条市の持つ魅力の更なる強化のためには、安全で快適な道路環境の構築を避けて通ることはできません。正に「道づくり」は「まちづくり」に直結します。特に、長年の課題となっている慢性的な交通渋滞の解消に向けた取組については、強く推進していかなければなりません。
この課題の要因となっている特定の路線に集中した交通量を広く分散させるためには、今後想定される交通需要も見据えた中での道路ネットワークを構築することが必要です。そのため、新保裏館線北工区等の都市計画道路の整備を着実に進めていくとともに、新たな市道の整備や道路拡幅を推進してまいります。
また、道路ネットワークの構築は、私たち三条市の力のみでは成し遂げられないことは言うまでもありません。国道289号バイパス(仮称)石上大橋下流橋等建設や国道8号栄拡幅など、国、県が行う事業の早期着手又は整備推進に向けて、近隣市町村や関係団体と共に国、県に対し強く要望してまいります。
むすび
以上、私の基本的な政策の考え方を述べさせていただきました。
私は、市長に就任してからの4年間、可能な限り多くの方々と対話を重ね、時には他と比較し、私たち三条市に足りていないもの、そして更に成長していく伸びしろはどこにあるのかを常に模索してまいりました。
眼前には、急速な少子高齢化、人口減少など大きな課題が立ちはだかっていますが、私たち三条市が今後も前進し続けるために、私は恐れることなく決断し、実行してまいります。
この決意と覚悟の下、議会の皆様を始め市民の皆様と真摯に議論を重ね、これからの4年間精一杯努力してまいります。
来年、三条市は合併20年の記念すべき年を迎えます。まずは20年を市民の皆様と笑顔で迎えられるように、そして30年、40年、50年とその笑顔が続くようなまちづくりを私たちで行っていきましょう。
何とぞ、皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。
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更新日:2024年12月02日