三条市指定有形文化財「木造十一面観音菩薩立像」
安養院(あんよういん)の木造十一面観音立像(もくぞうじゅういちめんかんのんりゅうぞう)は、檜材の一木造(いちぼくづくり)で、彫(ほり)くちの浅い小ぶりで穏(おだ)やかな目や口元、極めて薄手でシンプルな衣文表現(えもんひょうげん)などに平安時代最末期の彫刻の特徴をみることができます。 三条市内には平安時代末期に遡(さかのぼ)る古像は極めて少なく、高さ33.3cmの素朴な小像ながら貴重な仏像です。
三条市指定有形文化財「木造十一面観音菩薩立像」
1 名称
木造十一面観音菩薩立像
2 員数
1躯
3 指定年月日
平成25年6月25日
4 所在の場所
三条市神明町
5 所有者
宗教法人安養院
6 種類
彫刻
7 品質及び形状
檜材、一木造
8 寸法又は重量
像高33.3cm
9 製作の年代又は時代
平安時代末期
10 伝来その他参考となるべき事項
安養院は、三条市馬場で開創(かいそう)し、当初は白山権現信仰(はくさんごんげんしんこう)の本地仏(ほんじぶつ)であるこの木造十一面観音菩薩立像を本尊とする法相宗(ほっそうしゅう)寺院であったと伝えられています。
11 説明
安養院の木造十一面観音菩薩立像は、真言宗智山派鉄宮山来迎寺安養院(あんよういん)の本堂に、現本尊の阿弥陀如来坐像(あみだにょらいざぞう)の右脇侍(みぎわきじ)として安置されています。
仏像の高さは33.3cm、頭体(とうたい)は檜の一材から彫成(ほりな)された一木造です。両肩(りょう かた)、および両肘(りょうひじ)、両足先でさらに材を矧(は)ぎ付けています。彫(ほり)くちの浅い小ぶりで穏(おだ)やかな目や口元、極めて薄手でシンプルな衣文表現(えもんひょうげん)などに平安時代最末期の特徴をみることができます。
十一面観音は、観音が持つ能力や利益を目に見える形で表現した日本で最初の変化(へんげ)観音です。文字通り十一面の顔を持ち、あらゆる方向に顔を配することで、すべての衆生に救済の目を向けることを示しています。
安養院十一面観音菩薩立像は、頭部正面中央に蓮弁を表して、その内部に阿弥陀化仏を浮彫し、左右側面にかけて各5つの変化面を天冠台状(てんかんだいじょう)に一列に配し彫出(ほりだ)していますが、各面貌(めんぼう)は明らかではありません。背面のみ無文帯状の天冠台を表現しています。
変化面(へんげめん)を小さく天冠台状に一列に配(はい)する十一面観音菩薩立像の例は一般的には少なく、智識寺(ちしきじ)(長野県千曲市)国指定重要文化財十一面観音菩薩立像(平安時代末期)などの例があります。また、安養院の仏像のような変化面の簡略化は、鉈彫(なたぼ)りの宝伝寺(ほうでんじ)(糸魚川市)国指定重要文化財十一面観音菩薩立像(平安時代後期)の造形感覚にも近いものがあります。
三条市内で平安時代末期に遡(さかのぼ)る仏像は極めて少なく、素朴な小像ながら貴重です。また、寺伝(じでん)などから、この地域における古くからの白山信仰との関(かかわ)りを伝える点でも、この仏像の歴史的意義は大きいといえます。
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更新日:2024年09月27日