三条市指定有形文化財「本成寺多宝塔」

本成寺多宝塔 外観 北西より

本成寺多宝塔 外観 北西より

   木造二層塔(もくぞうにそうとう)、銅板葺(どうばんぶき)で、江戸時代中期の明和年間に建築された建造物です。五重塔などの層塔(そうとう)としての手法でまとめられ、軒廻り(のきまわり)や組物(くみもの)などの意匠も豪華で全体的に仏塔形式(ぶっとうけいしき)としてよく整っています。建築の分類では塔状の形式を持つ重層の堂(どう)に位置づけられ、新潟県内においても数少ない貴重な建造物です。

三条市指定有形文化財「本成寺多宝塔」の概要

1 名称

   本成寺多宝塔

2 員数

   1棟

3 指定年月日

   平成22年7月26日

4 所在の場所

   三条市西本成寺一丁目

5 所有者

   宗教法人本成寺

6 構造及び形式並びに高さその他大きさを示す事項種類

   木造二層塔、方形造、銅板葺、3.36m四方(2間四方)

   建築面積11.31平方メートル

7 建築の年代又は時代

   江戸時代中期 明和年間

8 創建及び沿革

   『本成寺明細帳』(明治38(1905)年)によると、「上杉家臣山吉長久建干支不詳。明和7(1770)年破損に付、当寺二十八世日修再興す」とある。

9 むな札、墨書その他参考となるべき事項

   なし

10 説明

   本成寺多宝塔(ほんじょうじたほうとう)は木造二層塔、石積みの基壇(きだん)上に建ち、上・下層の屋根は共に本瓦の形を模した銅板葺(どうばんぶき)で、上層屋根は方形造で頂部には相輪(そうりん)がのります。建物は11尺1寸四方の正方形平面で、柱は全て円柱を用い、内部の四天柱(してんばしら)は約6尺四方に配され、それがそのまま上層階まで延びています。全体に弁柄塗(べんがらぬ)りが施してあります。

   下層内部は正面側を礼拝空間とし、厨子(ずし)を設けています。外部は四周に切目縁(きりめえん)を廻し、親柱高欄(おやばしらこうらん)を廻します。床下は漆喰仕上(しっくいしあ)げの亀腹(かめばら)を四周に設けます。軸組は地長押(じなげし)、腰長押(こしなげし)、木鼻付頭貫(きばなつきかしらぬき)、台輪(だいわ)を廻し、斗組(とぐみ)は尾垂木(おだるき)、支輪付(しりんつき)の二手先(ふたてさき)で中備えとして彫刻蟇股(ちょうこくかえるまた)を置きます。軒は二軒の扇垂木です。

   上層は下層階よりの四天柱がそのまま上層階まで延びて隅柱となり、その内側に上部相輪を支える左義長束(さぎちょうそく)が4本上方へ延びています。外部は四周に切目縁を廻し、組高欄を設けています。切目縁を支えるため、その下部に出三斗組(でみつとぐみ)の斗組を設け、中備えとして彫刻蟇股を入れます。軸組は円柱に地長押、内法長押(うちのりなげし)、台輪を廻し固めます。斗組は2本の尾垂木と二重支輪を用いた三手先であり、中備えとして人形の蟇股を配します。軒は二軒扇垂木です。

   建築年代は寺蔵の記録(「本成寺明細帳」明治38/1905年)によると、明和7(1770)年二十八世日修代再興とあります。上下層の組み物に施された木鼻及び内部虹梁(こうりょう)の絵様は、多分にその時代性を表し、妥当性があります。

   当建物は「多宝塔」と称されますが、本来、多宝塔の形式は下層階の平面は方形で上層階は円形です。しかし、当建物は上下層共に方形であり、この呼称は当建物に安置している仏像が中央に宝塔、右に多宝如来(たほうにょらい)、左に釈迦如来(しゃかにょらい)で「一塔両尊(いっとうりょうそん)」の形式をとる法華経(ほけきょう)の教えに由来するものです。

   本成寺多宝塔の構造は五重塔などの層塔としての手法でまとめられ、また軒廻りや組物などの意匠も豪華で全体的に仏塔形式としてよく整うもので、建築の分類からすると縦長の比例を持つことから、塔状の形式を持つ重層の堂として位置づけられます。このような建物が今日まで残ることは、新潟県内においても数少ない事例として貴重です。

本成寺多宝塔 外観 正面

本成寺多宝塔 外観 正面

本成寺多宝塔 外観 北西より

本成寺多宝塔 外観 北西より

本成寺多宝塔 外観 下層軒

本成寺多宝塔 外観 下層軒

本成寺多宝塔 外観 下層組物

本成寺多宝塔 外観 下層組物

本成寺多宝塔 外観 上層軒

本成寺多宝塔 外観 上層軒

本成寺多宝塔 外観 上層組物

本成寺多宝塔 外観 上層組物

本成寺多宝塔 内部 西より

本成寺多宝塔 内部 西より

本成寺多宝塔 内部 下層天井

本成寺多宝塔 内部 下層天井

本成寺多宝塔 平面図

本成寺多宝塔 平面図

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更新日:2019年05月20日