新潟県指定有形文化財 「木造阿弥陀如来立像」
本都寺 木造阿弥陀如来立像 正面
本都寺(ほんとじ)の本尊である木造阿弥陀如来立像(もくぞうあみだにょらいりゅうぞう)は、檜材(ひのきざい)の寄木造(よせぎづくり)で、仏師快成(かいせい)の作風に共通する特徴が見られ、鎌倉時代13世紀後半頃に制作された仏像です。背面右側のリズミカルな襞(ひだ)の流れや特徴的な眼差しをもつ面貌(めんぼう)に、制作者のすぐれた力量をうかがうことができ、鎌倉時代中期の仏師快成の流れをくむ三尺阿弥陀如来像として貴重な仏像です。
新潟県指定有形文化財「木造阿弥陀如来立像」の概要
1 名称
木造阿弥陀如来立像
2 員数
1躯
3 指定年月日
平成24年3月27日
4 所在の場所
三条市飯田
5 所有者
宗教法人本都寺
6 種類
彫刻
7 品質及び形状
檜材、寄木造(よせぎづくり)
8 寸法又は重量 像高96.2cm
9 製作の年代又は時代
鎌倉時代 13世紀半ば〜後半
10 伝来その他参考となるべき事項
14世紀後半製作と推定される厨子(ずし)内に安置され、厨子絵には本像の脇侍(きょうじ)として観音・勢至菩薩像(かんのん・せいしぼさつぞう)が描かれている。
11 説明
鎌倉時代に快慶(かいけい)によって定型化された「安阿弥様(あんなみよう)」の流れをくむ三尺阿弥陀如来立像です。本像はそのなかでも仏師快成(かいせい)の作風に共通する特徴を多く見出すことができ、その影響が認められます。すなわち、(1)目頭の間隔がやや狭く、極端に細い玉眼(ぎょくがん)(2)鼻と唇の間隔がきわめて近く、口が小ぶりであることとその形、(3)下衣(したごろも)の襞(ひだ)の形、(4)引き伸ばした「Y」形の特殊な襞をつくる(右側の衣垂下部)、(5)やや肉厚の掌、など。また、仏師快成の作品として知られる福岡・万行寺(まんぎょうじ)阿弥陀如来立像(仁治4年/1242)と耳の形は異なるが奈良・春覚寺地蔵菩薩立像(しゅんかくじじぞうぼさつりゅうぞう)(建長8年/1256)のものとは近似しています。
仏師快成は寛元2年(1244)兵庫・中山寺十一面観音(なかやまでらじゅういちめんかんのん)の銘記(めいき)で法橋位(ほうきょうい)であったことが知られ、上記の万行寺像、春覚寺像に加えて30歳時の造像である奈良国立博物館愛染明王像(あいぜんみょうおうぞう)(建長8年/1256、台座銘 )などの作品が現存しています。快慶の子流にあたるとともに、善派との関係も指摘されている当代一流の仏師です。本像は、その強い影響下に造られた像と推定されます。
髪際全体が修理されていて、表面の漆箔(しっぱく)も後補であるために、本像の像容はだいぶ損なわれていますが、背面右側のリズミカルな襞の流れや特徴的な眼差しをもつ面貌には、すぐれた力量をうかがうことができます。ただし、もとより春覚寺像などに比してやや鈍く緩んだ彫り口であったようで、制作年代は春覚寺像よりさらに降るか、あるいは周辺仏師による工房作品とみられます。その活躍年代から、13世紀半ばから後半、第三四半期くらいまでの製作と考えらます。
伝来は不明ながら、南都(なんと)とのかかわりの深かった当地に現存する、鎌倉時代中期の仏師快成系統の三尺阿弥陀如来像として、注目すべき作例です。
本都寺 木造阿弥陀如来立像 厨子内安置
本都寺 木造阿弥陀如来立像 上部
本都寺 木造阿弥陀如来立像 背面
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更新日:2019年05月20日