所信表明

はじめに

    令和2年三条市議会第6回臨時会に臨み、所信表明の機会をいただきありがとうございます。それでは、ただ今から今後の市政運営に際しての私の基本的な考え方を申し述べます。
   今から16年前、高校卒業を機に生まれ育ったこの地を飛び立った私にとって、三条を離れていた期間は、より深くふるさとを知り、その素晴らしさを実感する時間でもありました。都会の便利な暮らしの中にある良い面と悪い面、それらを肌で感じる日常の中で、ふと自分の多感な時期を振り返るたびにふるさと三条は、かけがえのないものとして思い出されたのです。
   雪で苦労する分、春を迎える喜びが大きかったこと、その雪さえも見方を変えれば家族や仲間との絆を強めてくれるありがたいものであったこと、寒さが厳しければ厳しいほど夜空の星は凛と本当に美しかったこと。
   間違いなく人格形成の核となっているこの地の様々な記憶は、外に向かって手を伸ばそうとする私をいつも支え続けてくれました。
   そんな愛してやまないこのまちを大切に守り育て、より良い未来へと確実に引き継いでいかなければならないと強く思っています。
    しかし、我が国の急速な少子高齢化、人口減少は、著しい世代間の不均衡を始めとする人類がこれまで経験したことのない様々な変化を社会にもたらし、その影響は今後更に拡大すると見込まれています。加えて、現下の新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、当市の社会活動、経済活動にも大きな影を落とし、依然として収束の見通しも不透明なままです。
  そんな先行きが不確実な時代であるからこそ、このまちの英知を結集し、手を携えて難局に立ち向かっていかなければなりません。
先の三条市長選挙において、私は、多くの温かい御支援を賜り、今後4年間、市長の重責を担わせていただくことになりました。
立場を超え、主義主張を超え、世代を超え、そうした様々な方々から支えていただいたことは私の誇りです。
   しかし、三条市長である私の責務は、支えてくださった方々のみならず、このまちに暮らす全ての方々の思いを真摯に受け止めた上で、進むべき道を選び取り、その決断に責任を持ち、ぶれることなく積極果敢に実行していくことです。
そうした信念の下、私が、そして多くの方々が愛するこの三条市が更に発展していくため、「30年後も『ものづくりのまち』であるために」「地域資源を生かした産業の創出・発展」「地域の個性を生かしたまちづくり」「安全・安心な暮らしの確立」「福祉施策の充実、健康長寿の更な
る前進」「未来のために『今』必要な子育て支援、教育の充実」及び「女性の活躍、働き方改革」を政策の柱として各種の施策を推進してまいります。

1 30年後も「ものづくりのまち」であるために

    いうまでもなくこのまちのアイデンティティは「ものづくり」です。高い技術力を誇る製造業や生み出された製品を日本全国、世界各地へと届ける卸売業がこの地域の発展を支えてきました。
   「このまちはどんなまちですか」と問われれば、大半の方が「金物のまち」「ものづくりのまち」と答えるでしょう。そんな際立った特徴を持つまちは全国でも極めて稀な存在です。こうした他にはない資源や優位性を磨き続けることが、三条を無二の存在へと導いていきます。
   そのためには、この地域が生み出す優れた製品をその価値に見合った適切な価格で販売できる環境を整え、十分な収益を確保できるようにすることを通じ、商工業の継続と発展、将来の担い手である若い世代の確保や後継者の育成を図っていくことが必要です。
    高度で柔軟な技術力に裏打ちされた製品開発のサポートやその価値を評価してくれる市場へのアプローチを総合的、戦略的に展開するとともに、私自らも先頭に立って国内にとどまらず海外へも燕三条製品の魅力を発信していくほか、日々の暮らしに欠かせない安定した所得を確保する「就労の場」としての当市の魅力を高めることで、多くの若者から「この地で働く」という選択をしていただけるよう取り組んでまいります。
    また、来年4月に開学し、令和6年度に最初の卒業生を送り出すこととなる三条市立大学がこのまちのものづくりの未来を支える有為の人材を数多く育成できるよう、地域の企業との緊密な連携を図ってまいります。

2 地域資源を生かした産業の創出・発展

   ものづくりを基軸としつつも、多くの若者から就労の場として選ばれるためには自分に合った職業を選べる多彩な環境を用意することも重要であり、それは、結果として社会の変化に強いしなやかな産業構造を創出することにもつながります。
   新型コロナウイルス感染症は、世界中の人々の生活様式や企業活動を大きく変容させる契機となりました。こうした局面は、斬新なアイデアと技術で、私たちが思いもよらない新たな事業が創出される端緒にもなり得るものです。時代の潮流を捉え、新たな社会の構築を目指す果敢な挑戦を支援することで、このまちの新たな可能性を追求してまいります。
   また、「燕三条 工場の祭典」は、産業観光の側面からも様々な波及効果を生み出しました。これに加えて、米はもちろん果樹や野菜といった幅広い品目が栽培され、産業観光に対する大きな可能性を秘めている農業についても、その潜在力を引き出す取組を進めてまいります。
   さらに、休耕地、耕作放棄地の増加は、農業生産の減少だけでなく昔ながらの土地の風景を失わせるなど、周囲に様々な影響を及ぼします。
それらを農地へと再生する取組はもちろんのこと、現在の状況をチャンスと捉え直し、休耕地等を活用した再生可能エネルギーの利用など、自然と調和した新たな事業の創出にも取り組んでまいります。
   他方で、こうした新たな産業の創出に向けた取組のみならず、これまで地域を支えてきた代表的な産業のひとつである農業それ自体を将来にわたって成り立たせていくことも必要であり、作物の付加価値を高めることを通じ、課題である十分な所得や後継者の確保を図ってまいります。

3 地域の個性を生かしたまちづくり

   毎日違う表情を見せる山々、木々を揺らす風の音、季節で異なる空気の匂い。豊かな風土が培った日々の暮らし。私が大切に思うそんな景色は、三条の魅力のごく一部に過ぎません。まちへの誇りや愛着を育てるそれぞれの地域の個性的な生活環境や伝統文化を、新たな価値を付加しながら時代に合った形で未来へと残していくことが次の世代に対する私たちの責務です。
   三条地域は、古くからこのまちの歴史や文化を育んできた交流の拠点でした。体育文化会館と令和4年度に供用する図書館等複合施設を核に様々な資源を有機的に結び付け、人々が出掛けたくなる活気ある多彩な交流を生み出す拠点としての機能再生に取り組んでまいります。また、三条市立大学や県央基幹病院を始めとする広域的、基幹的な都市機能が集積することとなる燕三条駅周辺を広域交流の拠点と位置付け、市内外から多くの人々が集う、にぎわいと交流の拠点にふさわしい環境の整備に取り組んでまいります。

    栄地域は、海外でも人気の高い企業が立地し、24時間全ての車種が出入りできる栄スマートインターチェンジの近くに工業流通団地も整備されるなど、ものづくりのまちの要となり得る地の利に恵まれた地域です。子育て関連施設や教育関連施設がコンパクトに集積するなど、子育て世代にとって住環境にも優れており、更に民間の投資を呼び込むことによって、今や国内外に通用するようになったものづくりのまちの将来を支える地域としてその基盤を固めてまいります。
   下田地域は、四季折々の趣を見せる大自然を始めとしたかけがえのない資源が数多く存在する地域です。その特長を生かしたアウトドア・アクティビティなどの体験型観光の充実に引き続き取り組むとともに、国道289号の八十里越区間開通後には、太平洋側からの玄関口となることを見据え、近隣市町村と連携した広域観光の取組も積極的に展開してまいります。また、穏やかな時間の中でゆったりと過ごせるという魅力に共感する方々の定住を、この度の感染症の影響により広がりを見せる新しい働き方との親和性も示しつつ、促してまいります。

4 安全・安心な暮らしの確立

    市民の皆様が安全に安心して暮らせる環境を整えることは、行政の根本的な使命であり、毎年のように全国各地で自然災害が多発している現状において、ソフト、ハード両面からの災害対策を一層強化していくことが求められます。
    7.29水害からは9年が、7.13水害からは既に16年が経過し、当時を直接経験したことのない世代も多くなっています。私自身も2度の水害をこの地で経験していません。しかし、過去の事例を踏まえることで、万が一の事態に備えることは可能であり、また、備えていかなければなりません。
   「自分の命は自分で守る」「地域は地域で守る」という自助、共助の意識の醸成を継続的に図るとともに、市民一人一人が地域の実情や特性を把握し、いざというときには状況に応じた行動を迷うことなく実践することができるよう、学校現場や地域における防災教育の充実に取り組んでまいります。
    他方で、公助を担う行政の責務を確実に果たすため、水害に限らず地震や土砂災害、雪害、さらには感染症までも含む様々な事態を念頭に、全国の事例を収集し、新たな知見を導入することでこれまで築いてきた対策を不断に見直すほか、関係機関と連携したハード整備についても着実に取り組むことによって災害に強いまちづくりを進めてまいります。
    また、災害のような非常事態に限らず、日々の暮らしにおける安全・安心を確立することも大切です。特に犯罪に対して最も弱い立場にある子どもたちが脅かされることのないよう、放課後の安全の確保や通学路の安全の確保に地域と連携しながら取り組んでまいります。

5 福祉施策の充実、健康長寿の更なる前進

    図らずも社会的に弱い立場に立たされ、助けを必要としている方々に寄り添い、きめ細かくサポートしていくことこそ政治、行政に課された最も重要で基本的な役割です。
    生活に困窮している方、介護や障がいのことで悩む方、様々な事情で苦しんでいる方がいらっしゃいます。また、そうした方々を行政が全て把握しきれていないという問題もあります。
    今後は、困っている方、悩んでいる方、苦しんでいる方の把握にこれまで以上に努め、現場の声をつぶさに聞き、どんな生活をしたいのか、何を大切にしているのか、一人一人をそれぞれの人生の主役として尊重し、自らの意思によって日々の生活を営んでいけるよう、その選択肢を広げるための取組を進めてまいります。
    今日の長寿社会では、生涯にわたって心も身体も健やかに、住み慣れた地域において安心して住み続けられるまちづくりを進めていくことが求められます。
    歳を重ねても生き生きと自立した生活を送っていくためには、身体の健康はもちろんのこと、人間関係の豊かさなどからもたらされる心の健康を維持していくことも重要です。そのために喜びや楽しみといった精神的な充実感を得ることができる、人々が集い、出会い、交流する多様な場の形成に取り組んでまいります。
    また、支援や介護が必要な方の地域での暮らしを支える地域包括ケアシステムを安定的に機能させていくためには、十分な介護従事者等の確保が急務です。そうした人材の発掘や育成、定着に向けた取組を一層強化するとともに、多様な主体との連携や新たな技術の活用により、地域における支え合いの体制づくりを進めてまいります。

6 未来のために「今」必要な子育て支援、教育の充実

    核家族化の進行、地域の人間関係の希薄化など、子育てを取り巻く環境に起因し、多くの子育て世代が不安や負担を感じています。それらを少しでも取り除き、子育てが本来持っている喜びを感じられる環境を形成していくことは、結果的にこのまちが若者世代から選ばれることにもつながっていきます。
    子育ての様々な場面で生じる経済的な負担の軽減に取り組んでいくほか、生まれた環境や育った環境、障がいの有無など、様々に事情が異なる子どもたちが等しく自己の可能性を追い求めることができるよう、個に応じた継続的かつ総合的な支援を実施してまいります。
    教育の基礎は人間関係であり、学校教育の現場では、先生と子どもたちの関係が最も大切です。先生が子どもに愛情を持って接し、子どもが先生を信頼するという関係がなければ質の高い教育は成り立ちません。
しかし、学校に対するニーズの多様化や社会の変化に伴う課題の複雑化によって先生の負担は大きくなっており、心ならずもそうした関係を十分に構築できない、あるいは構築するために先生が過度に頑張らざるを得ない状況が存在しています。
    身近な大人であり、子どもたちに様々な影響を与えることになる先生が、疲弊することなく情熱を持って生き生きと、子どもに向き合うという本来の役割により集中できるよう、必要な体制の構築に取り組んでまいります。

7 女性の活躍、働き方改革

    多様性が世の中に発展をもたらしてきたように、このまちが将来にわたり発展し続けていくためには、それぞれに異なる考え方や異なる価値観をお互いに認めていくことが欠かせません。
    長らく主に男性目線から構築されてきた我が国の社会制度や仕組みが、制度疲労を起こし、現在の社会全体の閉塞感につながっているという指摘もあり、とりわけ女性の目線をより大切にしていくことが重要です。
    また、それぞれおかれた状況が異なる働き手に対して画一的な働き方を求めることは、個々の生活に負担を強いることにもつながります。それぞれの事情に寄り添った多様で柔軟な働き方を認め、促していくことにより、働き手が自らの選択で能力を十分に発揮できる環境を整えていくことも大切です。
    三条市で最も大きな事業所である三条市役所は、地域の企業の働き方に影響を及ぼす存在でもあります。女性が活躍しやすい環境の形成や多様で柔軟な働き方の促進に、この地域で活動する一事業主として、市内企業の模範となれるよう、率先して取り組んでまいります。
    また、多様で柔軟な働き方を通じて生まれる心身の充実を基礎とし、職員がこれまで以上に丁寧に市民に向き合うことで、市民サービスの更なる向上へとつなげてまいります。

(むすび)

    以上、私の基本的な政策の考え方を述べさせていただきました。
この度の三条市長選挙では、若く行政経験も全くない私に対して「34歳の者に何ができるんだいや。おめさんに何ができるんだいや」という非常に厳しい御意見を頂戴することもありました。
    しかし、私は決してひとりではありません。
    立場や意見の相違こそあれ、このまちの素晴らしい未来を作り上げていこうとする9万5千人余の三条市民が私と共にあると信じているからです。
    だからこそ私は、市民の皆様に対して、民主主義の原点である対話を、諦めではなく希望を、政治や行政は信頼に足るものなのだということを自らの言葉で、自らの行動で示し続けなければなりません。
    この県央地域をあらゆる面で名実ともに先導するような素晴らしい三条市を築いていくことをお誓いし、その覚悟の下、議会の皆様を始め市民の皆様と真摯に議論を重ね、これからの4年間精一杯努力してまいる所存でございます。
   何とぞ、皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。

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更新日:2020年11月30日